日蝕えつきる 読了
帯に「希望を捨てよ」と書かれていましたが、いやはやその通り。一寸の光もないお話でした。
面白いとか面白くないとか、そういうお話ではないと思います。主人公は5人。それぞれの人生を短編で綴られているのですが、行き着く先はどれも暗黒。(長十郎という人物のだけは、まぁ自業自得というか少し毛色が違いました)
時代小説なのですが、どれも作者が目で見てきたようにリアルなのです。
私は女なのですが、お登勢の運命には胸がかなり痛みました。本を開いているのが辛くなったほどです。そして次二という人物の物語での描写が凄まじく……物を口にしたくなくなりました。この作者、凄まじい筆力です。
解説者は男性の方だったのですが、その方は吉弥という陰間のお話が辛かったそうで、性別によって感じ方が違う本なのかもしれません。
どうしてこんなにも救いのない話を作者は書かれたのでしょう。そんな疑問もありますが、この本はフィクションとはいえとてもリアル。こんな運命を辿られた人が、その時代には確かにいたのだと、そして今のこの世にもいるだろうと思います。それを知ることは決して無駄じゃないはず。
余談になるのですが、作者の花村萬月という名前、とても綺麗ですよね。てっきり女性の作者だと思い込んでいたのですが、男性だったようです。なんだか風流で良いなぁと思いました。
時代小説なのでとっつきにくさはあるかもしれませんが、ある意味とてもすごい本だと思うのでいかがでしょう?
もちろん子供には薦められませんが。